記事一覧

医療・福祉・地域支援(現場)

【就労実践・最終回】精神保健福祉士(PSW)からあなたへ ─ 絶望を「次の出発点」に変えるためのメッセージ

2026.08.07


6-1. まずは「絶望を否定せず当然の現実」を受け入れる──あなたのせいではない

シリーズの最後に、綺麗な理想論だけを伝えるつもりはありません。

まず最初に、あなたが今感じている「絶望」や「やりきれなさ」を、私は決して否定しません。そう感じて当たり前なほど、今の社会制度と現実は過酷だからです。

💸 A型・B型事業所の収入だけでは生活できない構造的問題

就労継続支援B型の平均工賃(月約1.5〜2万円)や、短時間契約のA型事業所の給与(月8〜10万円程度)だけで、家賃・食費・光熱費のすべてを賄うことは物理的に不可能です。これはあなたの節約不足や努力不足ではなく、現在の福祉制度・雇用制度の構造的な問題です。

📄 必要な人に届かない「障害年金」の審査の壁

障害年金は「困っている人全員」に自動で配られるものではなく、厳格な書類審査の壁が存在します。体調が苦しい中で書類を準備したにもかかわらず「不支給通知」を受け取った時のショックは、目の前が真っ暗になるほど深い絶望を与えます。

🧱 「助けて」と言いにくいセーフティネットの空気

生活保護の窓口での冷たい対応や、親族への連絡(扶養照会)を恐れて申請を躊躇してしまう方も少なくありません。セーフティネットの網目は、私たちが思う以上に粗く、届きにくいのが現実です。

💡【補足:扶養照会について】

現在は厚生労働省の運用改善により、DVや虐待の経験がある場合だけでなく、関係性が悪化している場合や長期間連絡をとっていない場合など、窓口で事情を伝えれば親族への連絡(扶養照会)をスキップできる運用が広がっています。決して諦めないでください。

だからこそ、精神保健福祉士(PSW)として現場からあなたへはっきり伝えます。

「あなたが今苦しいのは、決してあなたのせいではありません」

そらみち

社会の仕組み(構造)と、あなたの生活の実態が噛み合っていないだけです。自分を過剰に責めるのはやめて、まずは「今の状況は個人の能力や責任のせいではない」と認めることから始めましょう。

6-2. それでも大丈夫。生き抜くための「3つの装備とルート」

厳しい現実がある一方で、あなたには確かに使える「制度(ルート)」と「装備(手段)」が存在します。これまでの連載で紹介してきた内容を、もう一度整理しておさらいしましょう。

1. 公的支援という「装備」を使う

  • 利用できる制度:障害年金、生活保護、自立支援医療、住居確保給付金など

  • 捉え方:これらは「誰かの慈悲」で与えられるものではなく、あなたが人間らしく生きるために法律で定められた「当然の権利」です。制度を使うことは「甘え」ではなく、荒野を生き抜くための賢明な「戦略的装備」です。堂々と活用してください。

2. 緊急避難という「盾」を持つ

  • 利用できる資源:社会福祉協議会の緊急貸付、フードバンク、一時生活支援事業など

  • 捉え方:「今日食べるものがない」「住む場所を失いそう」といった極限状態になったとき、命を守るための避難場所は必ず用意されています。助けを求めて一時避難することは、負けではなく「生存戦略」です。

3. 働き方の「選択肢」を広げる

  • 多様な選択肢:特例子会社、超短時間労働(ショートタイムワーク)、在宅ワーク、小規模な副業など

  • 捉え方:「一般就労か、障害者雇用か」という極端な二択の呪縛から抜け出しましょう。体調や特性に合わせて、働き方をパズルのように組み合わせて良いのです。「月3,000円の小さな在宅ワーク」でも「週1回の短時間パート」でも、それは立パーな第一歩です。その小さな歩みが、未来を支える太い道になります。

6-3. 一人で背負わない!専門職・支援者と「チーム」を組もう

この過酷な現実を、あなた一人で背負い続ける必要はありません。

支援者(福祉の専門職)は、あなたの行動を監視・管理するためではなく、あなたと一緒に課題と戦う「共同戦線」のパートナーとして存在しています。

支援機関・専門職 あなたの生活における役割
ケースワーカー / 自立相談支援員 住まいやお金など、生活の土台(インフラ)を一緒に固めてくれる「建築士」のような存在
社会福祉協議会(社協) 地域で孤立しないよう、さまざまな制度や居場所をつないでくれる「地域の味方」
就労支援員(ナカポツ・A/B型スタッフ)

※ナカポツ=障害者就業・生活支援センター。

あなたの体調という「OS」に合わせて、最適な働き方を提案・調整する「エンジニア」のような存在

そらみち

苦しい時や生活が崩れそうな時、どうか一人だけで決断しないでください。支援者は、あなたの隣で一緒に人生の地図を広げるために待っています。

6-4. 最後にPSWからあなたへ伝えたいメッセージ

ここまで記事を読み進めてくださり、本当にありがとうございます。

最後に、福祉の専門職として、そして同じ時代を生きる一人の人間として、心から伝えたい3つのメッセージを送ります。

①「あなたの人生は、まだ終わっていません」

どれだけ今が暗闇でも、「もう限界だ」と感じていても、今日という日まで工夫し、耐え、生き延びてきたあなたには確かな底力があります。

②「あなたには、あなたのペースがあります」

周りのスピードに無理に合わせる必要はありません。「世間の普通」を目指す必要もありません。疲れたら休んでいい、立ち止まってもいい、時には後退しても構いません。大切なのは、あなたが自分自身の呼吸で生きることです。

③「あなたは決して一人ではありません」

この連載を通じて、私たちは現実の厳しさを直視し、使える「道具」を一つひとつ点検してきました。収入の再設計、公的支援、緊急避難、働き方のポートフォリオ。そのすべては、あなたがこれからの生活を再構築するための「材料」です。

どうか忘れないでください。

あなたは、生きていていい。

あなたには、幸せになる権利がある。

そしてあなたの人生は、ここから何度でも、新しく始められます。

関連コンテンツ

参考文献・リンク

関連記事

記事一覧
目次