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【就労実践・第1部】A型・B型の給料・工賃で「生活できない」のはなぜ?データで解き明かす構造的理由と生存戦略

2026.07.27


はじめに:その「申し訳なさ」は、あなたのせいではありません

精神保健福祉士(PSW)として現場にいると、同じような「痛み」の言葉を何度も耳にします。それは、今画面の前にいるあなたの心の声と重なっているかもしれません。

  • 「A型で頑張って働いているのに、家賃を払うので精一杯…」

  • 「B型の工賃だけでは、スマホ代と日用品を買ったら残らない」

  • 「働いているのに自立できない自分が情けない」

そして、多くの人がこう結論づけて自分を責めてしまいます。

「もっと努力すればいいのに」「周りはできているのに、私はダメだ」と。

ですが、断言します。あなたが悪いわけではありません。あなたの努力が足りないから生活できないのではないのです。

まずは感情を一旦脇に置いて、この国で起きている現実を「データと数字」で冷静に見ていきましょう。

1. 政府データで見る「収入と生活費」の現実

生活が苦しいのは、あなたの能力の問題ではなく、「制度の仕組み」の問題です。厚生労働省の公的データをもとに、その正体を解き明かします。

📊 A型(雇用型)の平均月額賃金:約8.5万〜9万円

厚生労働省のデータによると、就労継続支援A型の全国平均月額賃金は約8.6万〜9.1万円です。最低賃金は保証されているものの、体調配慮や制度上の設定から「短時間勤務(週20〜30時間程度)」が多く、月収はどうしてもこの水準にとどまります。

📊 B型(非雇用型)の平均月額工賃:約1.7万〜2.4万円

B型の全国平均工賃は、月額約1.7万〜2.4万円です。これは雇用契約を結ばない「工賃(成果報酬)」であり、事業所の作業売上から分配される仕組みのため、単体の収入で生活費を賄う金額には届きません。

💸 「単身者の最低生活費」との大きなギャップ

一方で、単身者が最低限の生活を送るために必要な費用(家賃・食費・光熱費・通信費・医療費など)は、地域にもよりますが月12〜15万円程度が必要です。

  • A型(約8.5万円〜9万円):家賃と光熱費を払った時点で、食費や予備費が手元にほぼ残りません。

  • B型(約1.7万円〜2.4万円):生活費の大部分が不足します。

つまり、「A型・B型の収入だけで完全な自立生活を送ることは、計算上、最初から不可能に近い」のです。あなたが「生活できない」と感じるのは、甘えではなく、シンプルな「数学的結果」に過ぎません。

2. 結論:これは個人の問題ではなく「構造的赤字」です

データから見えてくる事実は、以下の2点です。

  1. 生活が成り立たないのは「制度の前提」によるもの

    就労継続支援(A型・B型)は、そもそも「その給料だけで一人暮らしを完成させる」ためだけの制度ではなく、障害年金や公的支援、家族との協働などを組み合わせることを前提とした「福祉サービス(訓練・就労の場)」として作られています。ここに個人の努力だけで挑むのは、底に穴が開いたバケツで水を汲むようなものです。

  2. 「働けば報われる」という自責の呪縛から自由になる

    「稼げない自分が悪い」と責めるのは、今日で終わりにしましょう。あなたが苦しいのは、あなたが弱いからではなく、今の制度が単体で生活コストをカバーする構造になっていないからです。

では、どうすればいいのでしょうか?

ここからは、精神論ではなく「現実的な生存戦略」の話をしましょう。

3. 【提案】自分を守るための「視点転換」と生存戦略

制度の壁にぶつかった時、必要なのは「根性」ではなく「戦略的な工夫」です。

視点1:自分の「仕様(スペック)」に合った働き方を許す

A型・B型を利用する方の多くは、体調の波や集中力の持続に課題を抱えています。これは「欠点」ではなく、あなたの今の「心身の仕様(OS)」です。無理にフルタイムを目指すのではなく、今の仕様に合った運用を優先しましょう。

  • 「休める環境」を命綱にする

    急な体調不良時に「お互い様」と言い合える環境を確保することが、結果として長く働き続けるための鍵になります。

  • エネルギーを分散させる

    「週5日フルパワー」で限界を迎えるより、「週3日・短時間」から始め、残りの体力を自炊や休息などの生活維持に使うのも立派な戦略です。

視点2:家族との同居は「戦略的シェアハウス」と捉える

「いい歳をして実家にいるのが申し訳ない…」と感じる必要はありません。

収入の構造上、生活費に満たない以上、家族と同居することは「極めて合理的な生存戦略」です。これを「依存」ではなく「相互扶助(助け合い)」と捉え直してみてください。

ただし、双方が共倒れしないための「距離感」づくりが大切です。

  • 心理的な距離をとる

    同じ家に住んでいても、心理的には「シェアハウスの同居人」くらいの一定の境界線を意識する。

  • 自立を「細かく分解」する

    いきなり「完全な経済的自立(一人暮らし)」を目指す必要はありません。

    • 生活リズムの自立(自分で決めた時間に起きる・寝る)

    • 身の回りの自立(自分の洗濯や部屋の掃除は自分でする)

    • 家庭内役割の自立(ゴミ出しや食器洗いを担当する)

こうした「小さな自立」を重ねることが、失われかけた自信を取り戻す確かな土台になります。

まとめ:あなたのペースで、新しい地図を描こう

A型・B型の収入だけで生活が成り立たないこと。

それは、あなたの責任でも、努力不足でもありません。

だからこそ、「自分がダメだ」と責めるエネルギーを、「この条件でどう自分らしく生き残るか」という作戦会議に使っていきましょう。

  • 働けない日があってもいい

  • 実家や公的支援を頼ってもいい

  • いわゆる「普通」と違っていい

この連載を通じて、既存の決まり切ったルートにとらわれない、あなただけの「生きるための地図」を一緒に探していきましょう。

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参考文献・リンク

本記事の数値は、以下の公的資料等を参考に記述しています。最新の数値は各リンク先をご確認ください。

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