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【熊本市・益城・西原】自宅が無事でも体調悪化?2度目の地震のメカニズムと予防法

2026.08.07

10年前の熊本地震で大きな被害を経験した熊本市、益城町、西原村などの地域では、今回の地震において「自宅の建物は無事だった」「避難所に入るほどではない」にもかかわらず、発災直後から高血圧、激しい動悸、頭痛、不眠、持病の急悪化を訴える高齢者や住民が増加することが予想されます。

「八代や氷川などの深刻な被災地に比べれば、自分は大丈夫」「我慢しなければ」と思い込みがちですが、実はこれには精神医学や災害医学における構造的な理由があります。

1. 家は無事なのに体調不良が起きる理由|2度目の地震と脳の過敏反応

10年前の熊本地震のときと今回とでは、私たちの脳や身体の反応パターンが異なることがあります。

① 10年前のトラウマ体験による脳の「感作(過敏化)」と防衛バリアの低下

1度目の大地震(10年前)

発災直後はアドレナリンやストレスホルモンが大量に分泌され、興奮状態(気が張った状態=英雄期・ハネムーン期)が続くことが知られています。これは災害心理学で広く用いられる被災者の心理変化モデル(Zunin & Myers)でも示されている段階で、直後は必死で持ちこたえることができ、落ち込みやうつ、身体の虚脱感は数週間〜1か月ほど経ってから現れるパターンが一般的とされてきました。

2度目の大地震(今回)

過去に激しいトラウマを体験すると、恐怖に対する脳の神経回路(扁桃体など)が過敏になる「感作(Sensitization)」と呼ばれる状態が生じることが、PTSD研究で報告されています。こうした方は、2度目の被災で「気を張って乗り切る防衛バリア」が働きにくく、発災直後からダイレクトに強い不安・交感神経の興奮・身体症状が早期に表れることが臨床の現場でしばしば見られます(なお、軽度〜中等度のストレス経験がかえって耐性を強めるケースも報告されており、反応は個人差が大きいことにも留意が必要です)。

② 視覚映像より「実際の揺れ(身体感覚)」が自律神経を直撃する理由

テレビやスマホで被災映像を見る(視覚的フラッシュバック)以上に、「グラッとくる実際の揺れや地鳴りを全身で体験すること(身体感覚の再体験)」は、脳に強烈なインパクトを与えると考えられています。

言葉や思考を担当する大脳皮質を経由せず、恐怖を担当する脳の原始的な部位(扁桃体)や自律神経系を直接刺激するため、頭で「今回は大丈夫だ」と思おうとしても、身体が一瞬で10年前の記憶を呼び覚まし、動悸・血圧上昇・呼吸の乱れといった反応が起こることがあります。

2. 高齢者の特徴|「心の不安」ではなく「身体のSOS(持病悪化・高血圧)」に出る

高齢者の場合、ストレスやトラウマが心ではなく「身体の症状」として現れやすい特徴があります。

① 「怖い」と言わない高齢者に多い「災害高血圧」と心身症のリスク

高齢者の多くは、トラウマや過度の緊張を感じても「心が不安だ」「怖い」と口に出さず、ご自身でも自覚されないケースが目立ちます。

その結果、脳と自律神経の過剰反応が、「急激な血圧上昇(災害高血圧)」「激しい不眠」「原因不明の頭痛・めまい」「心不全・心筋梗塞・脳卒中」「呼吸器疾患の悪化」といった身体のSOS(心身症・持病の急性悪化)として現れやすくなります。

② 在宅被災者に潜む危険|「我慢」が引き起こす自宅での災害関連死

内閣府の『災害関連死事例集』などの公的データによると、災害関連死の約8割は70歳以上の高齢者です。

また、熊本地震の災害関連死218人のうち、亡くなった場所が「自宅等」だった方は81人(約37%)にのぼり、病院に次いで多い割合となっています。つまり、避難所に入らず自宅で生活を続けていた方の中にも、持病の悪化による災害関連死が多数報告されているのです。

「大きな被害を受けた地域の方に比べたら、自分は恵まれているから」「病院が混んでいるから申し訳ない」と通院や受診を我慢してしまうことが、持病を致命的なレベルまで悪化させる大きな引き金になります。

3. 「隠れ被災」から命を守る4つの緊急アクション

熊本市や益城町、西原村などで生活されている高齢者の方やご家族は、以下の対応を徹底してください。

行動1:心の弱さではなく「脳の正常な生理的防衛反応」だと理解する

2度目の地震で直後から激しい体調不良が出るのは、心が弱いからではなく、脳と自律神経が「命を守ろうとして即座に過剰警戒モードに入った」自然な生理反応です。

行動2:血圧上昇・激しい動悸・不眠があれば遠慮なく医療機関を受診する

普段と違う血圧の上昇、激しい動悸、眠れない、息苦しい、頭痛が続くなどの症状があれば、「もう少し様子を見よう」と我慢せず、速やかに地域の医療機関を受診してください。

行動3:持病の服薬中断は厳禁|お薬手帳がなくても再処方可能

ストレス下での服薬中断は危険です。お薬手帳や手持ちの薬が不足している場合でも、医師や薬剤師に相談すれば再処方が可能です。毎日の血圧測定と意識的な水分補給も続けてください。

行動4:ご家族・地域による「積極的な声かけと早期受診の勧め」

「お父さん、昨日は眠れた?」「胸の苦しさや頭痛はない?」と、ご家族や地域の自治会・近所同士で積極的に声をかけ合い、我慢しがちな高齢者の早期受診を後押ししてください。

4. まとめ:建物が無事でも「身体は被災している」

被害の大きかった地域を思いやる気持ちは大切ですが、だからといってご自身の心身が出しているSOSを無視してはいけません。

10年前の恐怖と記憶を持つ私たちの脳と身体は、揺れを感じた瞬間にすでに大きなダメージを受けていることがあります。「自宅が無事でも、身体は被災している」と認識し、持病の管理や早めの医療受診を通じて、ご自身とご家族の命と健康を守りましょう。

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参照元・公式資料一覧

本記事の作成にあたり、以下の公的機関および学会の公式資料を参照しています。

内閣府(防災担当)
日本高血圧学会
日本内科学会
日本老年医学会
日本トラウマティック・ストレス学会(JSTSS)
厚生労働省 / DPAT事務局

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