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社会保障の枠組み

保護者のための公的支援とお金の話

「精神的な不調の背景には、経済的な困難が深く関わっていることが少なくない」。

ある精神科医の言葉ですが、私は日々の支援の中で、その意味を痛いほど実感しています。

お子さんの病気や発達の特性について深く悩み、向き合っている保護者の皆様にとって、治療費や生活費、将来への経済的な不安は、精神的なつらさと並ぶほど、あるいはそれ以上に重い負担になっている方も少なくありません。

公的支援制度は複雑で分かりにくいものが多いですが、「制度を知らなかった」「手続きがわからなかった」という理由で利用できていない方が多くいらっしゃいます。この制度の情報にたどり着きにくいことが、結果として困難を長引かせてしまう場合があります。

この記事では、お子さん(18歳未満)の精神疾患や発達障害等でお悩みのご家族に向けて、精神保健福祉士の視点から、利用できる金銭的な公的支援制度を「医療費」「手当」「生活」の3つのカテゴリに分けて、わかりやすく解説します。

気になる制度があったらチェックして、ぜひ巻末に記した相談機関を訪ねてみてください。

保護者が直面する経済的・心理的な課題

多くの子どもを持つ保護者が経済的な困難に直面していますが、特に精神疾患の子どもを抱える世帯では、その課題が複合的かつ深刻化しやすい傾向があります。内閣府の「子供の生活状況調査(令和2年度)」からその実態をご紹介します。

1.経済的な生活苦の広がり

低収入世帯やひとり親世帯では、「生活が苦しい」と感じる割合が非常に高くなっています。低収入世帯では57%、ひとり親世帯では52%が「生活が苦しい」と感じており、これは全体の約25%という割合と比較しても圧倒的に高い水準です。

2.生活必需品の確保が難しい状況

経済的な苦しさは、単に貯蓄ができないというレベルに留まりません。低収入世帯では、食料を買えなかった経験が約38%、衣服が買えなかった経験が約46%に上ります。公共料金の未払いも多く見られ、生活の土台が非常に不安定になっています。

3.健康問題と収入の連鎖

さらに、経済的な困難は保護者自身の健康問題と密接に結びついています。低収入世帯や母子世帯では、「母親が働いていない理由」として「病気や障害のため」と答える割合が特に高くなっています。お子さんのケアに加え、保護者自身の健康問題が世帯収入の低さに直結しているケースが多いのです。

4.経済的困難が引き起こす保護者の精神的不調

経済的な重荷は、保護者の精神的な健康を蝕みます。経済的な困難を抱える世帯では、保護者に強いストレス反応や気分の落ち込みがみられる割合が高いことも報告されています。

これは個人の心の強さの問題ではなく、「過度な不安にさらされ続ければ、誰の心にも起こりうる適応の結果」ともいえます。

私たち精神保健福祉士は、これらの課題を乗り越えるために、まず「お金」に関する公的支援をしっかりと利用し、生活基盤を安定させることが何より重要だと考えています。

保護者を支える公的制度一覧

お子さんの治療や生活をサポートするための主な制度をご紹介します。

1.医療費の自己負担を軽減する制度

制度名 概要 対象・要件 ポイント

自立支援医療(精神通院医療)

精神科・心療内科の通院費用(診察、薬、デイケアなど)の自己負担額が原則1割に軽減されます。 精神疾患の治療で、継続的に通院が必要な方(発達障害なども対象) 高額な医療費の負担を軽減する制度です。所得制限がありますが、ひと月の自己負担額に上限が設けられます。
子どもの医療費助成制度 お住まいの市区町村が独自に行う制度。医療費の自己負担分を公費で助成します。 乳幼児期〜高校生相当までのお子さん(対象年齢は自治体により異なります) 窓口での負担がゼロまたは少額になります。精神科の通院も対象となるため、必ずお住まいの自治体で確認してください。

2.生活費・育児費用を助成する手当

制度名 概要 対象・要件 ポイント
特別児童扶養手当 お子さんの障害の程度(1級または2級)に応じて、月額の手当が支給されます。 20歳未満で、精神または身体に定められた程度の障害を有する児童を養育している保護者 精神疾患や発達障害のお子さんも対象となる場合があります。所得制限があります。生活の安定に直結するため申請を検討しましょう。
障害児福祉手当 重度の障害がある児童に対し、本人宛てに手当が支給されます。 20歳未満で、重度の障害があり、日常生活で常時介護を必要とする状態にある児童 特別児童扶養手当よりも重度の状態が要件です。※特別児童扶養手当と両方もらうこと(併給)が可能です。

3.生活・教育・将来を支えるその他の支援

制度名 概要 対象・要件 ポイント
精神障害者保健福祉手帳 税金の控除、公共交通機関の割引、就労支援サービス利用など、さまざまな支援の入り口になります。 精神疾患(発達障害含む)の状態で、初診日から6ヶ月以上経過している方 年齢制限はなく、何歳からでも申請可能です。将来の通学や就労を視野に入れ、継続的な通院がある場合は検討しましょう。
就学援助制度 学用品費や給食費、修学旅行費など、教育費用の援助が受けられます。 経済的な理由で小・中学校への就学が困難な保護者(所得制限があります) 教育費の負担を軽減できる重要な制度です。学校や教育委員会を通じて申請が可能です。
生活福祉資金貸付制度 療養に必要な費用や世帯の生活費など、資金の貸付が行われます。 低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯 緊急性や目的に応じて様々な種類があります。返済が必要な「貸付(借金)」であることを理解し、計画的に利用しましょう。

精神保健福祉士からのメッセージ

私たち精神保健福祉士は、経済的な問題も含めた生活全般の相談に乗る専門家です。

先に述べたように、経済的な困難は、保護者ご自身の心身の不調にも直結しかねません。保護者の皆さんが健康でいることが、お子さんの安定した療養につながります。

制度は、あなたの家族を守り、安心して治療を続けるために存在します。

支援を受けることは、弱さではありません。あなたとご家族が、今日を安心して過ごすための仕組みです。

迷ったときは、「相談する」「聞いてみる」という選択もあります。

どこに相談すればいいの?

  • お住まいの市区町村の窓口: 福祉課、障害福祉課などが制度全般を扱っています。

  • こども家庭センター: 子育てや家庭の悩みをまるごと受け止める、市区町村の総合窓口です。

  • 相談支援事業所・児童発達支援事業所: お子さんの支援計画を立てる専門機関です。

  • かかりつけの医療機関: 精神科や小児科にいる精神保健福祉士(PSW)などに、ぜひお気軽にご相談ください。

参考文献

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