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考えすぎてしまうのは、あなたの「性格」のせいじゃない ─『なぜか考えすぎる女性のストレス脱出法』から学ぶ、心の守り方

2025.03.24

「どうして私は、こんなにクヨクヨ考えてしまうんだろう」 「一度考え始めると、頭の中のグルグルが止まらない」

もし今、あなたがそんな自分を責めているのなら、まずは荷物を下ろして聞いてください。 それは、あなたの意志が弱いからでも、性格が暗いからでもありません。

心理学者スーザン・ノーレンはこう語ります。 “考えすぎる心は、生まれつきの性格ではなく、社会との関わりの中で作られたものである”

かつてPSW(精神保健福祉士)を志し、自身もうつ病の痛みを経験した私が、この本から得た「自分を許すための視点」をお伝えします。

1. その「考えすぎる癖」は、あなたが生き抜いてきた証拠

私たちは大人になる過程で、周囲からたくさんの「見えないルール」を受け取ります。 「怒ってはいけない」「迷惑をかけてはいけない」「失敗してはいけない」。

感情を外に出すことを禁じられた環境にいると、人はどうするでしょうか。 行き場のない感情を、頭の中で処理しようとします。つまり、「考えすぎる」という行為は、あなたが波風を立てずにその場を生き抜こうとした、懸命な「適応(サバイバル)」の結果なのです。

ノーレンが言う「性格の問題ではない」という言葉は、こう言い換えられます。 「あなたは弱かったのではない。むしろ、環境に合わせて懸命に調整してきたのだ」と。

2. 脳の「自動再生ボタン」──反すう思考の正体

専門用語で「反すう思考(Rumination)」と呼ばれる心の動きがあります。 これは、牛が食べたものを何度も噛み返すように、ネガティブな出来事を脳内で何度も再生してしまう状態です。

  • あの時の自分の発言

  • 相手の不機嫌な表情

  • 将来への漠然とした不安

これらが「脳内のリピート再生」によって増幅され、心は消耗しきってしまいます。 重要なのは、これが「脳のメカニズム(仕組み)」であって、あなたの「人格」とは関係がないということです。仕組みなら、対処の方法があります。

3. 性別を超えた「人間共通」の痛みとして

この本のタイトルには「女性の」とありますが、これは性別を限定する話ではありません。 私自身は男性ですが、うつの渦中にいた時、この本に深く救われました。

「自分を責める」「他人の顔色を過剰に伺う」「過去を悔やむ」。 これらは、繊細な感性を持つすべての人が陥りやすい、普遍的な脳の癖です。 「これは女性だけの問題ではない。人間なら誰にでも起こりうる脳の反応だ」 そう理解した時、孤独だった私の心に、ふっと風が通るのを感じました。

4. 感情は「天気」、あなたは「空」

ノーレンの教えの中で、最も私の心に響いたメッセージがあります。 「感情は、あなたの主人(マスター)ではない」

私たちはつい、湧き上がる不安や悲しみに飲み込まれ、「感情=自分そのもの」だと思い込んでしまいます。 しかし、本当は違います。 あなたは「空」であり、感情はそこを通り過ぎる「天気」に過ぎません。雨が降っても、空そのものが濡れて消えてしまうわけではないのです。

感情をコントロールしようと戦う必要も、言いなりになる必要もありません。 ただ、「あ、今、不安という雲が通っているな」と、少し離れた場所から眺めるだけでいいのです。

5. グルグルを止めるための「アンカー(錨)」

では、思考の暴走に気づいた時、具体的にどうすればいいのでしょうか。 ノーレンが提案する方法は、とてもシンプルです。思考から離れ、身体に戻ること。

  1. 深く息を吸い、ゆっくりと吐く。

  2. 足の裏が地面についている感覚や、手のひらの温かさに意識を向ける。

「頭の中でなんとか解決しよう」とあがくほど、思考のループは強まります。 だからこそ、理屈ではなく「身体感覚」というアンカー(錨)を下ろして、意識を「いま・ここ」につなぎ止めるのです。

おわりに ── 自分を責めるのをやめる一冊として

『なぜか考えすぎる女性のストレス脱出法』は、「考えすぎるあなたが悪い」とは決して言いません。 むしろ、「あなたがそうなった背景には、あなたなりの切実な理由があった」と優しく肯定してくれます。

思考がグルグルし始めたら、思い出してください。 その思考はあなた自身ではありません。そして、そのループは必ず、ほどくことができます。

参考文献

スーザン・ノーレン・ホークセマ著、栗田昌裕訳『なぜか考えすぎる女性のストレス脱出法』(PHP研究所、2007年)

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