頭の中がグルグルして、眠れなかった夜

ある朝、目が覚めても体が動かず、布団から出られない日がありました。
前日までの疲れというより、職場での出来事が、頭の中で何度も再生されていた(頭の中がグルグルしていた)のです。
上司からの理不尽な言葉や、無視されるような態度。
その記憶が、壊れたレコードのように、頭の中で何度も繰り返されていました。
お風呂に入っても、布団にくるまっても、休日になっても、心は休まらず、眠れない夜が続きました。
「心の引き出し」という考え方に出会う
悩みは、誰かに話したり、いったん「心の引き出し」にしまうこともできます。
あるとき、主治医の精神科医がこう言ってくれました。
「嫌なことは、心の引き出しにしまっておいてもいいんですよ。
必要なときに、また取り出せばいいんです」
最初は、正直なところ半信半疑でした。そんな簡単に気持ちが切り替えられるものだろうか、と。でも、試してみることにしたのです。
ノートに書いて、引き出しにしまう
私は、頭の中でグルグルしていた上司の言動を、思いつくままノートに書き出しました。怒り、悲しみ、悔しさ、情けなさ……どんなに激しい感情も、「私そのもの」ではなく「観測されたデータ」として、ありのまま紙に預けました。そして、そのノートに輪ゴムをかけて、机の引き出しにしまったのです。
すると、不思議なことが起こりました。
あれほど頭を占めていた思いが、少しだけ静まりました。
窓から差し込む光が、久しぶりに目に入りました。
書くこと・話すことの「浄化」効果
心理学では、「書く」「話す」といった行為が、心の内側にたまったものを外に出す助けになると考えられています。これを「カタルシス」と呼ぶこともあります。
問題を自分から切り離す「外在化」は、あなたが自分の人生の主導権を、記憶から取り戻すための静かな儀式です。
もちろん、嫌な出来事を完全に忘れることは難しいかもしれません。でも、「今は向き合うのがつらいから、いったん引き出しにしまっておこう」と、自分に許可を出すことは、心の健康を守るうえでとても大切なことです。
あなたの心にも、引き出しを
記憶は、あなたの頭の中に閉じ込めておくには、あまりに重すぎることがあります。
だから、一回だけ、外に出してみませんか。 それは「逃げ」ではなく、あなたが今日という時間を、あなた自身の手に取り戻すための「戦略的な休息」です。
あなたがその引き出しを開ける準備ができるまで、その物語は紙の中で、静かに眠っていてくれます。 その間、あなたはただ、今日という日の光を感じるだけでいいのです。
精神保健福祉士として、私はいつも、誰もが安心して自分の心と向き合える場所をつくりたいと願っています。あなたの心が、深く静かな呼吸を取り戻せる場所でありますように。